症例2  心不全を合併し、急性増悪を来した症例
77歳 男性
主   訴: 労作時呼吸困難 F-H-J分類 Ⅲ度
既 往 歴: 42歳でDMに罹患しインスリン療法中、 63歳 狭心症にて冠動脈バイパス術
67歳 洞不全症候群にてpacemaker implantation(VVI 60)
家 族 歴: 母:脳卒中  父:肝硬変
喫 煙 歴: 18歳から60歳まで(80pack years)
現 病 歴: 2003年11月はじめ頃より労作性呼吸困難(F-H-J分類 Ⅲ度)を訴えていた。最近真夜中に呼吸困難があり横になれず、しばしば泡状の粘液痰を喀出するようになったため2004年12月8日に来院した。
■初診時身体所見:
171cm、74kg、BMI 25.1、体温 36.5℃、発育良好で筋肉質、副呼吸筋腫大し、胸郭は樽状、チアノーゼはない。両下肢は浮腫状。Jugular切痕は1横指と短縮している。頸動脈は怒張している。
呼吸数23回/分、脈拍数81回/分、血圧178/87、酸素飽和度95%(room air)。
聴 診 所 見: 呼吸音衰弱、労作後軽い喘鳴を聴取する。背後で吸呼気にまたがる断続性のcrackleを認める。
心拍の最強は心窩部にあり、心拍の盛り上がりとギャロップを認める。バチ状指が疑わしい。
胸部X線所見: 両肺やや過膨張、横隔膜の平低化なし、右葉間の肥厚、両側肋横角はやや鈍化している。肺門部はやや拡大し心陰影は拡大(CTR59%)傾向である。
胸部CT所見: 両肺高度気腫状、右葉間は胸水と思われる。
呼吸機能検査所見(括弧内はサルブタモール吸入後):
FVC 2.75L(2.81)、FEV1 1.76L(1.84)、PEF 4.85L/s(6.18)
FEV1% 64.0(65.5)、%FEV1 63.1、V25 0.37L/s(0.36)、V50 1.20L/s(1.18)
FEV1:改善率:4.5%
循環器科検査所見: 心カテ:
LVG;Seg2、5、7hypokinesis、MR 1-2度、LVEDP 16mmHg CAG;#1 25%、#2 25%
#4 PL 50%、#4 PD 100%、#6(stent) 25%、#10 90%、#12(stent) 25%、#13 50%
#14 100%、#15 100%
LITA-#8 patent (SVG#2は前回閉塞) LITA-septal→#4 PD collateral++
#12→#14collateral+、#15 bridge collateral+
心電図所見: 心電図(12誘導):
心房細動、ペースメーカーによる心室ペーシング波形及びⅠ、Ⅱ、V4-V6にST-T異常を認める。
電 解 質: 血清K、Na、Clに異常はない。
末梢血所見: 白血球数8,600/μL(好中球73%、好酸球2%、リンパ球17.0%)
赤血球 457万/μL、Hb. 13.0g/dL、血小板 177万/μL、非特異的IgE 8.2IU/mL、CRP(-)、血糖 138mg/dL、総蛋白 7.5g/dL、HbA1c 6.2%
治   療: ハーフジゴキシンKY 0.125mg/d、ワーファリン 1mg,tid、ワソラン 40mg,tid、アイトロール 20mg,tid を経口投与する一方、オキシトロピウム60μg/bid からチオトロピウム18μg/dの連日吸入へ移行し、サルメテロール50μg(bid) ブデソニド200μg(bid)の吸入を併用した。
臨床症状は安定し、酸素飽和度はroom airで95%を保っている。
問 題 点: 1. 心機能、心電図の評価
2. 心不全がCOPD増悪に関与したのであろうか
3. 心不全とCOPDの聴診上の所見は?
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